- コラム
鴨について学ぶ
皆さんは「鴨」と「アヒル」の違いについて考えたことはありますか?
色がついているのが「鴨」で、白いのが「アヒル」と思っているかもしれませんが、実は違うのです。
鴨は野生に生息しているカモのことで、冬の季語でもあり、古くから日本で見られる冬鳥として親しまれてきました。
真鴨とは?
アヒルの祖先であるマガモは、鴨の中でも代表的な種類です。漢字では「真鴨」と書きます。
食用として古来より狩猟がおこなわれてきました。
日本においては、鳥獣保護法により狩猟鳥に指定されており、各種カモ肉の中でも本種の肉は質、量ともに最高位とされる。
オスは青緑色の首が特徴的なため、別名「青首」とも呼ばれます。鴨のオスは繁殖期に羽の色が鮮やかな色に生え変わるものが多いです。
「鴨」にちなんだ言葉
「鴨にする」「いい鴨だ」という言葉は、利用しやすい人物という意味です。鴨は日没にエサを取りに飛び立ち、明け方に元の場所に帰ってきます。その習性を利用すると鴨の大群が簡単に捕獲できることから、簡単に捕まえられる人や、だましやすい人を「鴨」と呼ぶようになりました。
「鴨が葱を背負ってくる」という言葉もあります。
これは、鴨肉ばかりでなく葱までが同時に手に入ればすぐに鴨鍋を作れることから、ますます好都合であることのたとえです。
アヒル(家鴨)とは?
真鴨を原種として家禽(カキン)化※された鴨。食肉用・採卵用に改良され、日本では平安時代末期頃に飼育されていたという記録が見られる。品種が非常に多く、公式に認められているものでは70種類近くある。
一般的に白い色をしており、品種によっては羽に他の色がついたものもあります。
※家禽(かきん)とは?
その肉・卵・羽毛などを利用する為に飼育する鳥の総称。または野生の鳥を人間の生活に役立てるために「品種改良」を施し、飼育しているものをいいます。
合鴨とは?
野生の真鴨と家鴨との交配種。ただし、家鴨は真鴨を品種改良した家禽品種で生物学的には真鴨の1品種であり、「真鴨」「家鴨」「合鴨」という呼び変えは生物学的なものではなく、歴史的伝統による文化的な呼称、あるいは商業的な理由によるものだそうです。
また、合鴨を水田に放して雑草や害虫を食べてもらい、美味しいお米と鴨肉を生産する合鴨農法というものがあり、畑作と畜産を組み合わせた複合農業にも使われています。
チェリバレー種(Cherry Valley)
チェリバレーとは、イギリスのチェリバレー農場の名称から名付けられ、現在の日本で一般的に流通している「合鴨」のほとんどは、食用として北京種をもとにイギリスで品種改良されました。
孵卵後60日程度で成鳥と同等の大きさまで成長し、ほぼ水に入ることはなく、その為、鴨特有の臭みが少なく繊細な味わいに育ちます。世界流通量の約80%を占めており、肉組織が緻密なため、コクの強い味わいが楽しめ、肉質が軟らかいのが特徴です。
また、皮下脂肪が厚く、他の食肉に比べ不飽和脂肪酸( 一価・多価)を多く含んでおり、脂は淡白で風味が良い品種となっております。
代表的な合鴨
「京鴨」「相鴨」「最上鴨」など・・・。
世界の鴨について
世界の鴨の産地では、主にフランス産、ハンガリー産などがありますが、こちらでは種類と、部位の表記についてご紹介します。
バルバリー種(Barbarie)
南アメリカの野生種が起源の種。
フランスで好んで使われるこの品種は、鴨の中でも最も大型であり、 比較的強いので飼育しやすく、生産性が高いのが特徴です。肉付きの良い脂肪分が少ない品種です。
鴨の中で一番の大型種で成長が早く、肉の量、質ともに優れており、フランス国内の飼育鴨の約9割を占めています。
ミュラー種(Mulard)
バルバリー種のオスと北京種のメスを掛け合わせて改良したフォアグラ生産用の品種です。
フォアグラを採った後の胸肉はマグレと呼ばれ、ガバージュ(強制肥育)をかけているため脂の割合が多く、バランスのよい赤身です。
シャラン鴨(Shallans)
フランスのロワール地方・シャランという町で飼育されていた鴨の一種。シャラン北部15~30kmに位置する、ヴァンデ県沿岸地域の湿地に生息。
生産量は少なく、伝統的な飼育法で専門の職人による手作りの飼料が与えられます。
カナール(Canard)
カナールはフランス語で鴨のことです。単にカナールという場合は、日本語で言うところの「アヒル」家禽の鴨という意味で使われる事が多いようです。
また、雄(オス)の鴨という意味もあるそうです。
フォアグラ(Foie gras)
肥育したガチョウの肝臓のこと。Foieは肝臓、grasは肥満したという意味。トウモロコシの餌(えさ)を強制的に食べさせ、運動させずに強制肥育して肝臓を太らせる。
脂肪分が多く、約50%含み、滑らかな舌ざわりがある。キャビア(チョウザメの卵の塩漬け)、トリュフ(セイヨウショウロ)とあわせて世界三大珍味とよばれている。フランスのアルザス地方、ペリゴール地方が産地として有名。
カネット(Canette)
カネットは生後2ヶ月以内の雌(メス)の鴨のことです。が、カネット=メスの鴨と表記しているところも多く、カネットと書かれている鴨肉は、メスなのでサイズが小さくて柔らかいとされています。
フィレ(filet)
フィレとかロースと書かれていることが多いですが、胸肉のことです。フィレ・ド・カナールで鴨の胸肉という意味になります。一般的に鴨肉と言って思い浮かべる部位です。
キュイス(Cuisse)
キュイスはもも肉のことです。キュイス・ド・カナールと書いてあれば、鴨のもも肉のことです。コンフィにして食べたりするのが一般的です。
マグレ(magre)
マグレ・ド・カナールと書かれていたら、フォアグラを取った鴨の胸肉のことを指します。マグレは鴨の品種ではありませんが、フォアグラを取る鴨の9割はミュラー種で、フォアグラを取るために、鴨に強制的に餌を食べさせるのと、肥育期間が長いためにお肉も大きく、脂がのっていてお肉の旨味もしっかりとしているのが特徴です。
~最後に~
今回は、鴨の種類や産地などをご紹介させて頂きました。
鴨肉は、鶏肉に比べて味が濃厚であり、ビタミンAやビタミンB群・ナイアシンなどが豊富に含まれていて、貧血や生活習慣病の予防に対する効果が期待できます。栄養価が高いわりに低カロリーなので、ダイエットに適している食材にもなります。
鶏肉に比べ味が濃厚で、脂身が分厚く脂質が多いのが特徴であり、特にメスは皮下脂肪が豊富でこってりとした味わいがあります。ただ、脂質が多いといっても、不飽和脂肪であるリノール酸が豊富なので、摂りすぎなければ特に心配することはありません。
また、適量で摂っていれば、中性脂肪やコレステロールを下げる効果が期待できます。
赤身の肉には鉄が多く、ヘム鉄といってからだに吸収しやすい鉄が含まれており、レバーが苦手な人にはおすすめであり、貧血の予防・改善に対する効果が期待できます。
「発育のビタミン」や「美容のビタミン」といわれているビタミンB2が豊富に含まれていて、細胞の再生やエネルギー代謝を促す作用があります。韓国などでは、鴨肉には解毒作用があるとされていて、薬としての効用も認められています。